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アニーホール


男と女の出会いと別れを描いたラブストーリーなんだけどすごく変。もちろん名手ゴードン・ウィルスによるマンハッタンの情景は素晴らしいけど、それだけでは名作たるゆえんにならない。やはり映画の文法を破壊しまくった構成力なのか(例えば、突然マクルハーンを呼び出して観客に向かって話しかける)。いやこれも違う。では衒学的な芸術の引用の嵐か。これもうっとおしいだけ。やはりダイアン・キートンがスタンダードを歌う場面か。これもおばちゃんの余興にしか過ぎない。いったい何がアカデミー作品賞を獲得するほどの傑作として支持されたのか。

 それは上記文のような“いらいらしたうっとおしさ”を惜しげもなくスクリーンに叩きつけたからであると強調したい。これが分からない人は、映画最後の“卵”の独白に耳を傾けたほうがいい。「男と女の関係はおよそ不条理で不合理でありながら卵を欲する―」。この“卵(幻影)”が“いらいらしたうっとおしさ”であり男と女の超えられない壁、悲劇なのである。かのチャップリンは“今世紀最高のコメディー”とこの映画を絶賛している。この悲劇的なテーマを笑い飛ばしたウディ・アレンのパンク精神がアカデミー会員を魅了したのではないか。

 だが、本人はアカデミー受賞式に出席せず、近くのバーでクラリネットを吹いていたという。映画だけでなく実生活もパンクなウディ・アレンにしびれてしまう。

 ちょうどこの映画が公開されていた頃(1977年)、失業率の増加とともにイギリス(ロンドン)ではクラッシュ、ピストルズを筆頭にパンクムーブメントの嵐が吹き荒れていた。みんなアナーキーに酔いつぶれていたが、ブームは一瞬で終わった。一方、アメリカのウディアレンは男と女、人間の壁、疎外感を笑いで反抗し、今なおハリウッドに「NO!」と中指を立てている。

 真のパンクとは何か? を教えてくれる反骨精神に満ち溢れた傑作として強くお勧めしたい。壊したりとか悪態つくだけがパンクじゃない。

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